Share

第7話 効率も意義も通じない

Penulis: 雨音休
last update Tanggal publikasi: 2026-04-13 07:41:08

 草原の中心に、黒い渦を巻いてテラーウルフが出現する。残忍な顔つき、漆黒の体毛、巨大な白い牙。その圧倒的な存在感に、トウマの背筋から冷や汗が伝った。

 テラーウルフが高々と吠える。

「ガアルルルゥゥッ!」

 ドンと音がして空中に文字が表示された。

 ――クエスト、テラーウルフの撃破

「ボスだ、逃げろ!」

「俺は死ぬ訳に行かないんだー!」

「私はせっかくレベル3に上がったんだからね!」

 ウミがすぐに反応した。その表情は恐怖に彩られており、モフモフとした尻尾がピンと立っている。勢いよくこちらを振り向いた。

「ご主人様、どうすれば!?」

「ウミ、動くな」

 トウマは状況を冷静に分析する。二人はまだレベル1である。

 戦っても勝てない。他人を助けるなんてもってのほかだ。

 死ねばデスペナルティ。

 トウマの下した決断は、

「逃げるしかない」

「でも、みんなが困っています!」

「他人よりも自分の命が優先だ!」

「見捨てられません!」

「落ち着けウミ」

「これが落ち着いていられますか!」

 逃げ惑うプレイヤーたち。

 その中には勇敢に立ち向かっているプレイヤーたちもいる。しかしテラーウルフの噛みつき攻撃に遭い、プレイヤーたちのHPバーはどんどんと削れている。やがて一人が地面に崩れた。うっすらと透明になって消失する。

「私、行きますっ!」

「馬鹿!」

 ウミが飛び出した。両手に剣を構えてテラーウルフに突撃していく。

:ウミちゃんやばいって!

:戦う前にヴァルでレベルを上げた方が良いよ!

 トウマはウミの背中を追いかける。しかし立ちすくんだ。凶暴なテラーウルフに近づきたくても近づけない。

「行っくぞおぉぉお!」

 ウミが敵の横っ腹を剣で斬りつける。彼女の攻撃力はバフ効果により上昇している。すぐにボスのターゲットが移った。

「がるるぅあああっ!」

 テラーウルフがウミに噛みつく。その一撃でHPの三分の一が減った。

「キャアッ!」

 それでもウミは負けん気である。テラーウルフの牙を振り払い、攻撃を再開する。

「ぐっ、このおぉぉおおお!」

:おい主人、ウミちゃんを早く助けろ!

:使い魔を見捨てるとか草。

:どうする? どうする?

:ウミちゃんここでスマイルチャージだ。

 トウマは苦々しく吐息をついた。

 周囲を見渡す。少し離れたところには森がある。その向こうは山。空にはお日様が出ており、トウマたちをあざ笑っているかのようだ。

 尻尾をモフモフと揺らしてウミは勇敢に戦う。

 敵のHPは着実に減少していた。とは言ってもまだ半分以上ある。

「グアルルルルッ」

 テラーウルフが吠えた。激しく暴れると共に突進する。

 周りで戦っていたプレイヤーたちが弾き飛ばされて転んだ。HPを失っている者もいる。

 ウミはというと瀕死だった。転んでも立ち上がり、敵に向けて剣をまた構える。しかし攻撃をもう一度受ければ詰みだろう。

 テラーウルフの獰猛な牙が、また噛みつこうとしていた。

 ウミが叫ぶ。

「人を見捨てて自分だけが生きることに、

 何の意義がありますか!」

 剣を振るう。

 時が止まった気がした。

:ちょっ、ウミちゃん本当に死んだ。

:おい、別の配信見に行こうぜ。

 トウマは右手を顔に当てて小声で唱える。

「――フィールドハック」

 視界が真紅に染まった。

 Enemy ground.

 A hole appearing.

 Are you ready?

「Sure!」

 瞬間ボスンと音がして、テラーウルフは地面に落ちた。突如として出現した落とし穴にはまっている。

 周囲のプレイヤーたちが驚いて声を上げた。

「えっ!?」

「何が!?」

 まだ死んでいなかったウミが顔を輝かせて振り向いた。

「ご主人様!」

「ウミ! 森へ走れ!」

「森? どうしてですか?」

「倒す作戦がある。テラーウルフを引きつけろ!」

「わ、分かりました! 行きます!」

 ウミが背中を向けて走り出す。

 テラーウルフはやがて落とし穴から脱出し、ウミの背中を追った。

 トウマはグラヴィティラインを使うかどうか迷う。

 あの巨体を拘束できるか?

 効果が切れた後で、こちらにテラーウルフのヘイトが向くかもしれない。

 未知数である。

 トウマも駆け出した。テラーウルフの後を追いかける。

(ウミ、死ぬなよ)

 効率を言っている場合では無かった。

 今は、生き延びるのが最優先だ。

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Komen (1)
goodnovel comment avatar
輪廻
命は大事にしたら一生使えるって、エリア88という漫画に出てくる武器商人の爺さんが言ってました(´°ω°)チーン
LIHAT SEMUA KOMENTAR

Bab terbaru

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第198話 キスが下手なところも

     ジェットコースターが動き出す。 いま、上へ上へと坂をのぼっていた。 ウミとアイギスとキャルル丸は一番前の席に並んで座っていた。胸元の安全バーを両手で握りしめる。期待と恐怖で胸がドキドキと高鳴っていた。この坂をのぼりきったら、何が待っているのだろうか? ウミははらはらとしてつぶやいた。「あ、アイちゃん、や、やばいですぅ」「やばい」「きゃる、きゃるるぅ」:ジェットコースターはスリル満点。:ウミちゃん、走り出したらバンザイしなきゃダメだよ。:スクショ準備OK。 ジェットコースターがじりじりと坂をのぼりきる。ゆっくりと下りに入った。眼下に広がる遊園地の鮮やかな景色。屋根の色は黄色ばかりだ。ウミの興奮が臨界点に到達した。恐怖を覚えて猫耳を伏せる。 瞬間である。 急降下。 興奮が弾けた。「「キャアアァァアアアアッ!」」「や、やばいですうぅぅぅぅ!」「きゃるるうぅぅぅぅっ!」 お客さんたちが絶叫した。ウミは顔面を硬直させて目を大きく見開いた。ジェットコースターが全速力で走っている。降下したと思ったら右に曲がり、左に曲がり、胸がドクンドクンと振動する。ハイスピードのまま縦回転ゾーンに突入した。ウミはバンザイをして叫んだ。「ヤバアァァアアアアアアアアア!」:ウミちゃん楽しんでるw:ウミちゃんの絶叫顔をスクショ完了w:アイちゃんが目をつむっているぞw ジェットコースターは走り続ける。曲がってくねって、下ってはのぼり、またしても縦に大回転する。ウミの胸はドキンドキンと爆発しそうだった。死にそうなスリルは次から次へと襲って来た。ウミは声が枯れるほどに叫び続ける。「やばいですぅぅぅぅっ!」 やがてスリリングな体験が終わり、プラットホームに帰ってくる。 車両から降りると、ウミとアイギスはウキウキとして笑い合った。モフモフとした尻尾がぶんぶんと振動する。喜びが溢れた。「アイちゃん、今の、とっても楽しかったですぅ!」「本当!」 アイギスの顔にも笑みが浮かんでいる。 キャルル丸はちょっと目を回していた。頭をふらふらと揺らしている。「きゃるるぅ……」 ウミが心配そうにキャルル丸の首を撫でた。「ちょっとキャルル丸、大丈夫ですかぁ?」「きゃるる!」 キャルル丸が自信満々そうに胸を張った。 猫の亜人なので、ウミにはキャルル丸の声が分か

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第197話 今度は俺が助ける番だ

     その日の午後。 王都アランクルスの遊園地にトウマたちは遊びに来ていた。 ウミとアイギスがフリーパスポートを入手したからである。一枚の券につき、20人が入場できるようだ。 スターリーピュアランドである。 ジェットコースターが勢いよく縦に回転している光景があった。客たちが黄色い歓声を上げている。その奥には大きなピンク色の観覧車があり、ゆっくりと動いていた。空中では大きな海賊船がスイングしている。全て魔導具製のようだ。ファストフードやポップコーンを売っている店もある。敷地は広大であり、夢の国のような光景が広がっている。プレイヤーの客がたくさんいて、お菓子を食べ歩きしている。カップル連れも多かった。頭に動物の耳を模したカチューシャをつけている者もいる。人々の表情はウキウキとしており、何とも賑やかだ。リスの着ぐるみを着たスタッフが掃除をしている。客たちのゴミを集めたり、ポイ捨てされたゴミを一生懸命にちりとりに集めたりしている。腕でオデコの部分をさすり、疲れたように吐息していた。清掃員と書かれた腕章をはめている。:今日は遊園地配信ですね。:この遊園地、入場料が馬鹿高いんだよな。:現実のハムスター王国よりもアトラクションにはスリルがあるぞw ドンと音がした。 ――遊園地クエスト、スタンプラリーを全部埋める 入場すると、一つのベンチのそばでトウマたちは立ち止まった。トウマがメンバーに声をかける。「みんな、この遊園地もゲームの攻略要素だと思う。心してかかってくれ」「わあー、凄いですぅ。楽しそうですぅ」 ウミが両手を広げている。アトラクションを眺めて目をキラキラとさせていた。 みんなの頬が嬉しそうに緩んでいた。 トウマはあごを手で撫でる。(まあ、少しぐらい遊んでもいいが) ウミがアイギスの手を握る。もう片方の手でジェットコースターを指さした。「アイちゃん、私、あれに乗ってみたいですぅ」「僕も乗りたい」「行くですぅ!」「うん」「きゃる

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第196話 久しぶりの先生

     新宿の中華レストラン、名前は朋来だった。 駅からほど近いお店だった。中は広々としており、小綺麗である。黒いテーブルと椅子が等間隔に並べられている。天井からは中国提灯がぶら下がっていた。大きなガラス窓からは道を行き交う人々を眺めることができた。十時であり、お客さんの入りはまだ少ない。中華料理を炒める音と、その香ばしい匂いが漂っていた。 真帆たちが到着すると、すでに船津は来ていた。テーブルの奥に座っている。ダークグレーのスーツ姿だ。真帆が右手を上げて会釈をすると、船津は立ち上がった。身体の線が細く、背筋はすらっとしている。だけどユウマよりも背が低い。 真帆とユウマは近づき、彼女が挨拶をした。「お久しぶりです。先生」「よく来てくれました。真帆さんと、その旦那さん。真帆さん、お久しぶりですね」 ユウマが頭を下げた。カジュアルなポロシャツを着ている。「ユウマと言います」「貴方がユウマさんですか。真帆さんの口から、ユウマさんの名前は何度も聞いていますよ。診察中にね」「そうでしたか」 ユウマは照れくさそうに頬を赤らめて、真帆をちらりと見る。 真帆は少し恥ずかしくなって、まぎらわすように微笑した。 船津が左手を伸ばして席を勧める。「立ち話もなんです。どうぞ、座ってください」「「ありがとうございます」」 船津の対面にユウマが座る。旦那の隣に真帆は腰掛けた。 すぐに店員が水コップを運んできた。外国語なまりのある日本語で「メニューがお決まりになりましたら、呼び出しベルを押してください」と言った。礼をして去って行く。 船津がテーブルに両手をつけたまま指を合わせて、口を開いた。「まず、入籍おめでとうございます、と言っておこうかな」「ありがとうございます」 真帆は喜色満面で頷く。ユウマも感謝を述べた。「それで、真帆さん。その後の身体の調子はいかがですか?」「特に変わったことはないです」「それは良かった。数年前は

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第195話 支払いの道

     翌日の早朝。 電話の音で真帆は目を覚ます。隣にはまだ眠っているユウマの気配があった。 カーテンの向こうはまだほの暗い。 けだるい眠気をそのままに、彼女は枕元のスマホを手に取る。 母からだった。(何かしら?) 通話マークを指で滑らせる。スマホを耳に当てた。「もしもし?」「もしもし、真帆か? 朝早くからごめんね」 聞き慣れた母親の声だった。苦労を重ねたせいで声が少ししわがれている。けれど、今はその声が一段と弱っているように響いた。 真帆はベッドに女の子座りをする。「どうしたの?」「実はね、相談があるんだけれど、いま、大丈夫かい?」「大丈夫だけれど、何? ふわあ」 思わずあくびが一つ出た。 母親は大切なことを伝えようとしているようで、声を絞り出すように説明した。「困ったことになってね。昨年、お父さんが、高梨さんにけがをさせただろう?」 緊張で心臓が跳ねた。 まさか、(賠償金のことなの?) 眠気にまどろんでいた頭が一気に冷えていく。「……うん」「実はね。高梨さん、京都の大病院で脳の再生医療を受けることになったんだと。……それがとっても難しい治療みたいでね。お母さんもよく分からないんだども、自由診療らしいんさ。だから、いっぱいお金がかかるんだって」「うん」「それでね。うちにはまだ、一千万円近くの支払い義務があるだろ?」「うん」「……高梨さんのご両親が、今すぐ払って欲しいって、言ってきてるんだわ」「……そっか」「こんなことあんたに相談しても、あんたを困らせるだけなのは分かってるんだ。あんたは今、ユウマちゃんと入籍したばかりで、おめでたい時期だからね。本当はこんな事を伝えるのも、すごく心苦しいんだ。だけど……秘密にしておく訳にもいかないだろ?」「そうね」「……はあ! 本当に困ったもんさ。真帆、いまお金あるかい?」 真帆は言うのをためらった。「……無いわ」「そうだよねえ。とにかく、そう言うことになったんだわ。お金の方は何とか色々と、お母さんたちで工面の当てを探してみるさ。……真帆、お前は心配せずに、ユウマちゃんと幸せに暮らしてね。とにかく、そういうことだから」「お母さんは元気なの?」「元気? あっはは。元気っちゃあ元気だよ。だけどこの頃は、いま言ったことで頭が痛いよ」「お父さんは?」「お父さんは相変わらず、

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第194話 幸せを手放すもんか

     その夜。 グラスオース号は王都アランクルスの近海に停泊していた。 ウミとアイギスが出港させたのである。 空には黄色い三日月が浮かんでいる。まるで弓のような形だとウミは思った。ちぎれちぎれの薄い雲が流れている。ちぎれた綿菓子みたいだ。黒い海を、月明かりだけがほんのりと照らしていた。時折魚がぴちと跳ねて、ちゃぷんと音を立てている。七月の夜風は少しだけ冷たかった。空気は潮の香りに満ちている。 ウミとアイギスは今、釣りをしていた。この十数日の間にギルドメンバーの全員が釣りシステムを開放させている。 キャルル丸もいて、興味津々に見つめていた。 トビウオのHPを回復させるためだった。何でも、HPが全回復すると素敵なプレゼントをくれるらしい。なので、ウミとアイギスは毎晩、二時間だけ釣りをすることにしていた。 ちなみに、NPCの操舵士のおやじさんは24時間営業である。 トビウオはキャルル丸の足元で丸くなっていた。 配信はしていない。 いま、ウミの木の棒がキュッとしなる。両手がぐぐぐと重くなった。 ドキンと胸が高鳴った。(やったですぅ!)「アイちゃん、来ました!」「本当?」「これは大きいですぅ」「すごい!」「きゃるるぅっ」 ウミが木の棒に糸を一生懸命に巻く。やがて海から魚が顔を出した。ウミは夜目が利いた。うっすらとピンク色がかった大きな魚である。 ウミの右手首には腕力の腕輪がはまっている。魚をぐいぐいと引き上げた。やがて、釣り上げられた魚を両手で握る。魚がぴちぴちとしなった。アイギスとキャルル丸が目を丸くしていた。 強く握られすぎているせいか、魚は困った顔をしている。 ウミがニカッと笑い、口からチャーミングな八重歯を覗かせた。「やりました! 大物ですぅ!」「ウミちゃん、それ大きい」「きゃるるぅっ」 キャルル丸が嬉しそうに頬を緩めて、舌で口をべろりと舐めた。「えへへー」

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第193話 三千円の結婚指輪

     カーペットも、カーテンやベッドの布団、枕カバーまでピンク色だった。 真帆は昔からピンクが大好きだった。 扉のそばにはプラスチックのタンスが三つ。その隣にはコンパクトな物干しが四つある。オシャレのためのスタンドミラーも備えた。ユウマが勉強するための小さな学習机と椅子も買った。 よーし、(素敵な部屋になったわね) この間、ホームセンターからピンク色の日々草を買ってきた。いま、ベランダのプランターに三つ植えてある。春から秋まで咲いてくれる花持ちの良い花であり、ユウマと二人で選んだのだった。可憐な花が夜風にそよそよと揺れている。 あれから、十数日が経過していた。 無事にアパートを借りることに成功し、入籍もした。 その際、二人の両親には電話で報告をした。今度、親族顔合わせをすることになっている。日取りはまだ決まっていない。 ゲーム内では、真帆たちは王都アランクルスに到着している。バフ料理や服を、作っては売る作業に明け暮れている。ウミを取り戻すために使い果たしたヴァルをまた貯めるためだった。いま、だいぶ貯まってきていた。 本当は、料理や釣り、爆弾や服の制作など、隠されたシステム情報を売ればぼろ儲けできる。 だが、それをすることをユウマはメンバーに禁じていた。システム情報を売るということは、料理や服を売って稼いでいるプレイヤーからすれば営業妨害である。実行すれば、グラスオースは迷惑ギルドのレッテルを貼られかねない。 いま、真帆はアパートのキッチンで夕食を作っていた。横長のキッチンであり広々としている。片栗粉をまぶした豚肉を焼いており、焼け具合を見て、混ぜ合わせておいた調味料をかける。生姜焼きがすぐに出来上がった。スプーンでタレを味見する。(うん、こんな感じね)「ふんふんふん」 自然と鼻歌を口ずさんでいる。 良い気分だわ。 ユウマは部屋でのんびりとくつろいでいる。 真帆はだし巻き卵も焼いた。明日の朝の分も多めに作る。 トマトとキュウリを切って、レタスを千切る

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第5話 梅おにぎり

     村の広場。 トウマたちは木製のベンチに並んで腰掛けていた。 ゲーム内は昼間であり太陽が出ている。近くにある桜の木が花々を満開に咲き誇らせていた。そよ風が吹いて、花びらがチラチラと地面を舞う。木枝が揺れる音がした。 大きめの梅おにぎりを、ウミが両手で持ってむしゃむしゃと食べている。モフモフと尻尾を振っており、ご機嫌のようだ。満面の笑みを浮かべている。 「美味しいですぅ、美味しいですぅ」「そりゃあ良かった」「ご主人様、ありがとうございます」「味わって食えよ」  梅おにぎり、200ヴァル。 道具屋で買ってきたものだった。手痛い出費である。 トウマは広場の光景を眺めた。中心には噴

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第4話 ヴァルの村

     ゴーレムを倒し終えると、ノーファンの村へと二人は転移した。 辺りには木造りの民家が立ち並んでいる。遠くを見ると森や山があった。地面は土。その道路で、トウマとウミは隣り合って佇んでいた。 「普通の村だな」「そのようですね」「とりあえず、狩り場に行くついでに、村を見て回ってみるか」「はぁい!」  二人で並んで歩き出す。 すぐに他プレイヤーの姿があった。 横切っていく通行人。その顔色は明らかに沈んでいた。他にも座り込んでいる女性がいた。壁にもたれかかっている男。空を見上げている魔法使いふう。誰もが死んだ魚のような目をしている。 異変に気づいたウミが声をひそめてつぶやく。不安に揺れ

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第3話 排除

    ロッジのような一室。木造りの天井と丸太で出来た壁。そこのベッドにユウマは腰掛けていた。 ここがゲームの中らしい。 顔の前にはステータス画面のような半透明の青いボードが浮かんでいる。 システム音声が響いた。 「プレイヤー様。VALORIUMオンラインの世界へようこそ!」 「あ、はい」 「まず、プレイヤー名を決めてください」 「トウマで頼む」 彼の本名は冬野悠馬である。 「トウマ、その名前は使用できます」 「良かった」 「次にゲーム内職業を選んでください」 画面には様々な種類のジョブが並んだ。 そして右上には特別コード入力の文字。そこをタップして、暗記し

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第2話 ログネスト

     ログネストの玄関は広い空間になっている。背の高い天井。タイル敷きの綺麗な床。 しかし、空気は息苦しいほど重かった。 今も、通路からドリンクを汲みに来た利用客がある。ちらりと振り返ると、寝ていないような疲れた顔をしていた。 ふと隣には男性店員に連れられた太り気味の客がやってきた。太り気味の客は男性店員に頭を下げて大声を出す。 「待ってください! あと五時間、五時間プレイできれば、ヴァルを払えそうなんです!」「お客様、すでに退室の時間でございます」 (……ヴァル?) 背中に鳥肌が立つのを感じながらユウマはカウンターに向き直る。 茶色い受付台を挟んで、ユウマの前には女性店員が立って

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status